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不妊相談 (最近は生殖医療と呼びます)

 不妊症は「妊娠を望む健康な男女が避妊せずに性交しているにもかかわらず、 一定期間妊娠しない状態」と定義され、その一定期間は「一年間」が一般的です。カップルの約10組に1組かそれ以上が不妊症で悩んでいると推測され、不妊症カップルの約65%に女性因子を、約50%に男性因子を認めます。不妊症を夫婦の問題として二人で取り組み、お互いを思いやりながら検査や治療に臨む姿勢が重要です。
 それではすぐにでも子供がほしくても一年間待たなければ不妊症の検査や治療はできないのでしょうか? 妊娠しにくい要因が明確に判明している場合(例:生理不順で基礎体温にばらつきがあって排卵障害が疑わしい)や、妊娠可能な時間や時期が限られる場合(例:ご夫婦ともに高齢で加齢による妊娠率低下を不安に感じている)は、一定期間を待たずに検査や治療に踏み切るのが得策であるかもしれません。


診療の流れ

1. 不妊症カウンセリング(初診)

 不妊症または不妊症の可能性を心配されて当クリニックを初診される場合には、できるだけご夫婦でご来院ください。どんな仕組みで妊娠が成立するのか(妊娠に必要な要素は何か)というガイダンスだけでなく、お二人の職業・生活環境・これまでの経過や今後の検査や治療にかけるそれぞれのお気持ちをみんなで共有して診療を進めます。

※カップルのご事情で、パートナーに話せない・まずは女性側だけで考えたい場合でも、ぜひご相談ください。


2. 不妊症スクリーニング検査

 不妊症の6大検査を主軸に、子宮腟部細胞診・頸管粘液クラミジア・トラコマティス検査・貧血検査(血算・フェリチン)・男性ホルモン(アンドロゲン)追加測定(フリーテストステロン・DHEA-S)・耐糖能検査(空腹時血糖値・インスリン)・抗ミュラー管ホルモン測定などを組み合わせた不妊症スクリーニング検査を実施します。

※症状や検査内容によって自由診療と保険診療を使い分けます。

1)基礎体温(BBT)測定
婦人科体温計という特殊な体温計で起床後すぐの体温を測定して基礎体温表にプロットし、直線でつないでグラフ化します。毎回の不妊症の診療は基礎体温表をもとに進められます。

※最近では測定値が内部メモリーに記録されるデジタル婦人科体温計が多いですが、数値だけではわかりにくいため、基礎体温表にグラフ化してご持参ください。ご希望に応じて基礎体温表を差し上げます。

※当クリニックはルナルナ メディコの導入施設です。

2)内分泌学的検査(各種ホルモン値測定)
視床下部・脳下垂体・甲状腺・卵巣から分泌される各種ホルモンのバランスが、妊娠成立に深く関わります。生理周期の各時期や測定条件(時間帯・食後経過時間など)でホルモン値は変化するため、複数回に分けて測定します。


a)月経期(生理2~5日目)(※遺残卵胞の有無を超音波検査で確認して測定します):エストラジオール(E2)、卵胞刺激ホルモン (FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、プロラクチン(PRL)、甲状腺刺激ホルモン (TSH)

b)黄体中期(基礎体温上昇後4~7日目):エストラジオール(E2)、プロゲステロン(P4)、テストステロン(T)

※必要に応じてホルモン負荷試験(LHRHテスト・TRHテスト)や甲状腺ホルモン・甲状腺自己抗体を測定します。

3)経腟超音波検査
超音波像によって子宮・卵巣・卵管の形態異常がないかを評価します。また各生理周期で排卵する卵胞の発育をモニターします。基礎体温表を参考に、妊娠する可能性の高い時期を推測して必要に応じて排卵促進剤を注射するタイミング法で必須の検査であり、不妊治療で最も繰り返し検査を要するのが経腟超音波検査です。

4)卵管通過性の確認

a)卵管通水検査:子宮内にカテーテルを挿入して生理食塩水を注入し、経腟超音波検査を走査します。子宮内部の形態異常(粘膜下筋腫・内膜ポリープや癒着など)や卵管の通過性(両側卵管閉塞や卵管留水症など)を調べます。頸管粘液クラミジア・トラコマティス検査陽性の場合には治癒確認後に実施します。

b)子宮卵管造影検査:子宮内にカテーテルを挿入して造影剤を注入し、骨盤レントゲン写真を複数回撮影します。子宮内部の形態異常(子宮奇形・粘膜下筋腫・内膜ポリープや癒着など)や卵管の通過性(片側または両側の狭窄・閉塞・卵管留水症や卵管周囲癒着など)を調べます。頸管粘液クラミジア・トラコマティス検査陽性や甲状腺刺激ホルモン異常高値の場合には各治療後に実施します。

※子宮卵管造影検査は当クリニックで実施できません。ご希望の場合には実施可能施設にご紹介します。

5)性交後試験(フーナーテスト)・精子不動化抗体測定
性交後試験は、排卵時期の朝に性交して数時間以内に来院し、子宮頸管粘液中の総精子数と総運動率を調べる検査です。本検査の偽陰性の可能性を考慮し、当クリニックは一次検査として精子不動化抗体測定を推奨します。

6)一般精液検査
男性因子として精液量と pH・総精子数・精子濃度・総運動率(・前進運動率・精子生存率)・正常形態率(奇形率)を評価します。2日以上禁欲してマスターベーションにより精液を専用容器に採取し、射精後1~2時間以内に当クリニックにお持ちください。精液の性状の変動は大きいため、複数回検査する場合があります。


3. 不妊治療計画立案

 全ての検査結果を総合し、ご夫婦に最も適した治療プランをご提案します。当クリニックでは一般不妊治療のみ〔漢方療法・タイミング法(排卵誘発剤・排卵促進剤)・副腎皮質ステロイド療法・メトホルミン療法・エストロゲン補充療法・黄体補充療法・黄体賦活療法・配偶者間人工授精など〕を取り扱っているため、手術や体外受精以上の治療を要する場合には不妊治療専門施設や総合病院をご紹介します。



不育症

 不育症は「2回以上の流産・死産・生後一週間以内の新生児死亡を繰り返した状態」で、必ずしもその流産や死産が連続している必要はありません。厚生労働省研究班の報告ではカップルの約16組に1組が不育症で悩んでいると推測され、当クリニックの試算では熊本市で年間200組のカップルが新たに不育症と診断されると考えられます。
 流産の頻度は高く、全妊娠の約15%は流産です。(妊娠を経験した女性の約40%が1回以上の流産を経験します。)反復流産(2回連続)の頻度は約4%、習慣流産(3回連続)の頻度は約1%です。一方で流産が偶然2回(3回)連続する確率は、15%の累乗で単純に計算すると2.3%(0.3%)であり、実際の頻度を下回ります。つまり連続流産する原因として流産の偶然的な繰り返し以外の原因や異常がある、不育症では「何らかの流産しやすい要因がある可能性」があると推測されるのです。
 流産の最も多い原因はお子さまの染色体疾患で、その頻度は50~70%です。(反復流産の原因の50%もお子さまの染色体疾患の連続です。)女性の加齢はお子さまの染色体疾患の最も重要な危険因子です。卵の染色体不分離が増加し、受精卵の染色体疾患の発生率が増加するため、40歳の女性の流産率は40%に上昇します。


診療の流れ

1. 不育症カウンセリング(初診) (※要予約)

 不育症または不育症の可能性を心配されて当クリニックを初診される場合には、できるだけご夫婦でご来院ください。不育症の原因候補や、原因別の不育症治療法という疾患の病態だけでなく、お二人の職業・生活環境・これまでの経過や今後の検査や治療にかけるそれぞれのお気持ちをみんなで共有して診療を進めます。

※カップルのご事情で、パートナーに話せない・まずは女性側だけで考えたい場合でも、ぜひご相談ください。


2. 不育症スクリーニング検査

抗リン脂質抗体検査・子宮形態評価・内分泌学的検査・血栓素因検査からなる不育症スクリーニング検査のほか、必要に応じて流死産絨毛・胎児組織染色体検査や夫婦染色体検査の実施を考慮します。
 ※症状や検査内容によって自由診療と保険診療を使い分けます。

1)抗リン脂質抗体検査
抗核抗体・ループスアンチコアグラント(LAC)・抗カルジオリピン(CL)抗体(IgM・IgG)・抗カルジオリピン(CL)β2グリコプロテイン1複合体抗体・抗フォスファチジルエタノールアミン(PE)抗体(IgM・IgG)・抗フォスファチジルセリン依存性プロトロンビン(PS/PT)抗体(IgM・IgG)を測定します。抗リン脂質抗体検査は偽陽性を示す場合が多く、(時間的な余裕があれば)陽性の場合には、12週間以上あけて再検査します。

2)子宮形態評価
子宮奇形は妊娠中期以降の流産原因に多く、泌尿器異常や感音性難聴を合併する場合があります。経腟超音波検査・ソノヒステログラフィ・骨盤MRI・子宮卵管造影検査などでその有無を総合的に評価します。

3)内分泌学的検査
各種ホルモン値(プロゲステロン・甲状腺刺激ホルモン)や耐糖能(空腹時血糖値・HbA1c)を評価します。

4)血栓素因検査
プロトロンビン時間・活性化部分トロンボプラスチン時間・プロテインC(抗原・活性)・プロテインS(抗原・活性)・アンチトロンビンⅢ活性・血液凝固第12因子活性などを検査します。

5)流死産絨毛・胎児組織染色体検査
新たに流産や死産を繰り返した場合に妊娠組織の染色体検査を実施し、その検査結果(正常核型・数的異常・不均衡型相互転座など)によって夫婦染色体検査などの追加検査の実施を検討します。

6)夫婦染色体検査
夫婦いずれかの均衡型相互転座が予測される場合などで、慎重な遺伝カウンセリングの下で夫婦同時の染色体検査実施を検討します。(ご夫婦それぞれの同意が必要です。)


3. 管理計画立案

 全ての検査結果を総合し、ご夫婦に最も適した治療プランをご提案します。原因が判明した場合にはその原因に応じた管理や治療を、原因が不明の場合には治療せずの経過観察の是非を検討します。不育症の50%以上は原因不明であり、それでも2回流産後の妊娠で80%、3回で70%、4回で60%、5回で50%の確率で次回妊娠の継続が可能とされ、不育症の専門外来で検査や治療を経験したご夫婦の85%が出産できると報告されています。もし今までに誰にも相談できずに悩まれてきたのであれば、ぜひ私たちにご相談ください。

《パートナー・ご家族のみなさま・ご友人のみなさまへお願い》
 不育症と診断された女性の40%は何らかの強い「こころのストレス」を抱えています。これまでの悲しい出来事で引き起こされた不安・憂うつ・拒絶・怒り・喪失感や夫婦関係の不和などが次回の妊娠に悪影響を与える可能性があります。彼女の言葉に耳を傾け、そのおつらい気持ちをご理解いただけるようお願い申し上げます。